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コンサバトリー物語

3005

このベランダを伸ばす形で建設

英国製のコンサバトリーの一例 *注
 築60年以上経って雨漏りのはじまっていた先代の家を解体して、老夫婦二人用の家を建てましたが、あちらこちらにイギリスの気配のある家になりました。その最たるものがコンサバトリーです。こちらではサンルームと言った方が分かりやすいかもしれません。
 今はもう昔の話になりますが、ロンドンに転勤して7年経ったとき夫は帰国の辞令がでたのを蹴って無職になり、当たり前のことながら社宅に住めなくなりました。そこでやむなく家を購入しましたが、その家に私はすぐにコンサバトリーを増築しました。
 緯度の高い英国(ロンドンで北緯50度、日本最北の宗谷岬で45.5度)では、日の射し方が斜めです。従って光があっても弱くて、皆太陽光に飢えています。そこでガラスの部屋をつくって居間風につかったり食堂にしたりして明るい光を楽しむのです。
 ガラスの建物と言えばまず温室が浮かびますが、その始まりは南方の植物を育てる部屋としてのオランジェリー(オレンジ用の建物)があります。1704年にアン王女がそれを作った当時はガラスが大層高価でしたから、ガラスを使った建物は貴族の間に富の象徴として広がって行きました。今はガラスも安価で特別の物ではありませんから、コンサバトリーは庶民の間でも大人気です。
 帰国した私が福岡の家にもそれを作ると聞いて、ある人は
 「あれはだめよ。洗濯干し場になるだけだから辞めた方がいいわよ」
と忠告してくれました。たしかに日本の夏は猛暑なので時期によっては向いていないと言えます。それでも、幅4.1メートル奥行き3.3メートルの部屋ができあがってみると、
 「ここの部屋が一番好き」
とその方は言ってくれました。周りは幅80センチの濡れ縁でぐるっと囲まれ、室内にはモンステラやポトスなどのポットがありますので、庭の緑とあいまって心をなごませてくれます。
 蚊に責められず庭が見渡せる部屋!
 明るいので昼には本や新聞を読むのも絶好の部屋!
 来客があれば緑を眺めながら語らう部屋!
 ただボーっとして時を過ごせる部屋!
 星降る夜には星を数え、月が美しければそれを愛で、と利用価値の高い部屋です。
 とは言え予想通り日本の熱帯並みの夏の暑さには向きません。このコンサバトリーはたまたま二階のベランダの張り出したコンクリートの下を屋根の一部に利用しており、そこからガラスの屋根が一間延びている作りなので屋根の半分は日光を通さないのですが、それでも真夏の昼間は坐る気がしません。
 我が家を建てた建築会社の監督さんに尋ねましたら
 1 屋根に遮熱の塗装をする
 2 ローイーガラスにかえる
 3 二重ガラスにする
などの方法を教えてくれました。
 とは言え、そのアイデアをたとえ建築にとりかかる前におしえてもらったとしても、果たして実行したかどうか。だいたいコンサバトリーだけでもお金がかかるのに、普通のガラスの2から4倍もかかるのではちょっとね。そこで知恵を絞ってまたコンサバトリ―を建てた職人の近藤さんに手を加えてもらうことにしました。




*注 この写真は、アートハウス21 様のご厚意で同社サイト(下記)から転載させていただきました。
http://www.arthouse21.co.jp/



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