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蜂崩壊症候群(CCD)

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 蜂の大群がある日突然いなくなってしまうCCDは様々の原因が重なって起こっている事象ですが、この本に具体的な一例が載っているのをご紹介します。

イギリス
 『窒素肥料が使われるようになると、昔ながらのノーフォーク式輪作(麦の後にクローバーを植えて空中窒素を土壌に取りこむ農法)は不要になり、ハチが蜜を集めていたクローバーは消えた。クローバーの代わりになる野草も、除草剤で根絶やしにされた。巣をつくる場所もなくなった。密集した草の間に巣をつくる種もいれば、地下の空洞(主に使われなくなったげっ歯類の巣穴)を好む種もいる。生垣や畑の縁の緑地が消えたせいで、地上に巣をつくるハチは直接的なダメージを受け、緑地が消えてハタネズミやハツカネズミが餓死したため、地下に巣をつくる種も間接的なダメージを受けた。仮にどこかに巣を作れたとしても、農業機械につぶされたり、農薬にやられたりする可能性が高い。』
 この現実に立ち向かっている話が別のところで出てきます。

インド
『インドでは植物の背があまり高くならないようにして、子供がハチの代わりに受粉を手作業でやっている』とあります。『子供なら植えてある列の作物の間に入っていけるし、かがまなくても作業できるからです。』
 この話をしているカルカッタ大学の生態学者バスー博士は、“農業の集約化に問題があると確信している”とあります。

日本は
 ひるがえって、日本のことを著者のフィリップ リンベリー氏は『日本語版発刊に寄せて』と言う序文で以下のように言及しています。
『日本の農業用用地は比較的狭く、その総面積は国土のわずか12.5パーセントで、英国と比較するとほぼ3分の一にすぎないが、日本は先進国の中で農薬を最も多く用いる国のひとつだ。このことが田園地域にもたらす代償は、すでに表面化している。多くの作物にとって非常に重要な花粉媒介者であるミツバチの著しい減少が、この日本でも起きている。食糧自給率がわずか40パーセントの国にとって、生産に深刻な影響を及ぼす現象は、何であれ懸念に値する。』
 ハチの生存可能な自然を残すのは容易ではありません。しかも絶滅の危機にひんしているのはハチだけではありません。果たして人類はこの自然を守るために正しく行動できるのでしょうか?
 なんだか絶望的になってきます。今年いただいた蜂蜜の味に複雑さが加わります。



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